モルモンフォーラム22号の「モルモン教と暴力」書評への雑感

るう


本年5月24日にモルモンフォーラム誌主宰の沼野氏より以下の内容のメールが届いた。

今回のモルモンフォーラム誌22号での書評を書くにあたって、沼野氏は高橋弘氏に論文「モルモン教と暴力」の論文の載ったバックナンバーを送ってもらえるよう依頼していた。が、結局、送付がなかった。そのため、当HPから論文をダウンロードした。そして、高橋氏から連絡があり同論文には不正確(不備)なところがあり今回の書評は遠慮して欲しいとのコメントがあったとのことであった。

そして、わたし宛てメールには続けて、同論文には論文としては不適切と取られても仕方のない記述がある事。それが、研究所も著者も送付を控えている理由ではないかと推測され、こうした問題のある論文をホームページ上に載せているのはよろしくないのではないかとの申し出があった。

わたくしは早速聖徒の未知オーナーの森氏を通じて論文著者高橋氏の見解を伺った。

高橋氏は沼野氏に同論文の抜き刷りを送るつもりであったが、既に新しい研究が相当量に上っており、今となっては、旧い論文はいろいろと書き加えたい部分が発生しているので、そういう意味で書評には及ばない旨沼野氏に伝えたとのことであった。それに対して沼野氏が、この論文を書評することに決めているので了承いただきたいとの返事であったそうだ。

結局、高橋氏サイドも仕事にかまけて論文送付はのびのびになってしまった。結果、沼野氏は印刷物としての「モルモン教と暴力」は手に出来なかったのである。

また、高橋氏は沼野氏の推測するような論文の内容で不適切な点、誤った点などは一切ないと明言されていた。

これはどう言うことであろうか。

言える事はこの書評はその出発点から既にこの論文「モルモン教と暴力」には重大な過失があるだろうという前提(ないしは思い込み)があって書かれているのである。 それでは、書評は論文の過失を指摘し充分に論証し尽くしているだろうか。実は全く成功してはいないのである。

例えば、論文は「血の贖罪」問題を挙げるにあたっても資料を明記しそこから詳細に論及している。対して書評は反証すべき資料は一切示していない。むしろ、元モルモンのクイン氏の著作を挙げて事実として認めているのである。しかし、書評はそうした血の贖罪の教義が広範に行われたいうことは「誘導的である」とヒステリックにいわば問答無用に打ち消しているのだ。論文がヤングの大会説教を引用している点でも「そこには修辞(レトリック)あるいは強い警告と受けとめられる要素があるはずである」と、高橋氏の資料読解力が不足しているとでも言いたげである。しかし、同論文を丹念に読めばそうした書評の断定の方がおかしいとだれしもが気付くのである。

書評は「高橋氏の執筆姿勢は初めから非難色が濃厚」といっているがその言葉は書評筆者の沼野氏にこそ帰されるべきであろう。

また、書評は血の贖罪に該当する罪1から9について「記述の主要な部分は、死刑執行の方法に関するものと読むことができよう。」とまたも脈路なく断定する。なんらの反証の資料を提示するわけでもなく高橋論文の資料批判を行うわけでもない。ただただ、モルモンの歴史のカルト性に対する高橋氏の指摘を死刑問題に摩り替えようと強弁しているだけなのである。

尚も呆れる事は自分の事は棚に上げ高橋論文に対して「教会にとって厳しい内容については典拠を記すべきである」と述べているのである。ブリガムヤング説教から「その場で盗人は殺せ」との資料を論文は提示しているのにこの言い様である。おまけに「読者が批判的に割り引いて読むべき箇所」などとも反証もせずに述べている。

まことに説得力のない書評である。。いや、既に書評とも言えないレベルである。

書評では論文でモルモン教が「えせキリスト教」と断じらていることが不快なようだが、論文の趣旨とその論旨からして「えせキリスト教」という表現は用いるべくして用いられたというべきであろう。また、「モルモン教本郡(?)の地下格納 庫には常時、一年分の食料と武器・弾薬が貯栽されているという信憑性のない風説を引いているのは、極めて学術論文にふさわしくない」というがモルモンの過去から現在を俯瞰してくるとこうした風説にも一定の説得力を持つという事で書かれているのである。ここまえくると沼野氏の読解力のほうにこそ問題があるのではないかと首を傾げたくなる。

なお、書評末尾にはこの論文の内容に基づいて訴訟云々とあるが、誠に情けない事である。先にもっとしっかり資料をあたり、きっちりした反論を出すべきである。

この書評に限らず沼野氏の文にはこうした資料・論拠が不整備なものがほとんどであり、今後もその手法を続けていればモルモンフォーラム誌も遠からずその使命を終えるのではないかと懸念する次第である。


高橋弘氏論文「モルモン教と暴力」

モルモンフォーラム22号(99年春季)掲載の同論文への書評

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