高橋 弘 著 「素顔のモルモン教」


V モルモン内部の歴史論争−教会当局の歴史家批判−批判の具体的内容

その6・一元論的歴史観の是非


 それだけではない。ボイド・パッカーは歴史家にたいし、歴史の発展過程そのものについても「一元論的」説明を要求する。モルモンの歴史家は「モルモン教会は、その始まりから今日にいたるまでのあらゆる瞬間、すべてのでき事のうえに神の御手が働いてきた」ことを証言し、証明すべきであるというのである。この考えに従えば、モルモン教のあらゆる出来事については、単一の説明しかあり得ないことになる。したがって客観的歴史を、たとえそれが専門誌であっても、決して発表してはならないとパッカーは主張した。

 クインは反論する。すべてのことを神の御手だけで説明できるとは思わない。『モルモン経』のなかのニーファイ人の滅亡にかんする説明は、決して単一ではない。神の御手のほかに、姦淫、密通、強盗団、不正な弁護士と邪悪な裁判官、虚栄といったものがニーファイ人の滅亡の原因になったと、経典そのものに説明されているではないか。『モルモン経』そのものが一元論的歴史観を斥けているのである。また、ブリガム・ヤングもいろいろな説教のなかで、ジョセフ・スミスの預言者としての召命ばかりでなく、人間的弱さについても明瞭に語っていた、と主張する。


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