高橋 弘 著 「素顔のモルモン教」


T 素顔のモルモン教 − 6 鉄のヒエラルキー


 モルモン教はすべての男性信徒に神権を与え、教会に寄与することを求める点で開かれた宗教であるという印象を与える。また教会はすべての男性信徒にたいし二十四(あるいは十八)ケ月間の海外宣教を半ば義務として課しているため、多くの忠実な信徒が学業や仕事を中断して海外宣教にでかけている。また信徒は毎週、礼拝以外にもワード(キリスト教の教会に該当) や地域の活動に積極的に参加している。このように、すべての信徒が教会に参加しうる組織を持つという面で、ある意味では民主的な宗教である。

 しかし信徒の参加は、教会の方針・方向をけっして左右することはない。モルモン教会の方針は、事実上、大管長会(大管長と、二人の副管長で構成)と十二使徒評議員会(十二人)、併せて十五名の幹部により決定されている。とくに大管長は、二人の副管長と協議や相談をしつつも、しかし神の預言者として、こと信仰と生活ばかりでなくモルモン教会の政策、経営、財務、財産の管理、運用、投資、ビジネス、大学や病院の経営、政治的方針、政界および宗教界との連帯など、あらゆることに関する絶対的な発言権を持っている。したがってモルモン教会に関するすべてのことは、大管長会、あるいは大管長一人の決定に委ねられている。モルモン教が「鉄のカーテン」の社会主義国に譬えられるのは、モルモン教会幹部が持つ絶対的権力、崩れることのない鉄のヒエラルキー、巧みな情報の管理・コントロールという、そのような状況が酷似しているためである。

 モルモン教の幹部がその絶大な影響力を駆使している分野は、政治と教会資金の運用面である。ユタ州は人口の約七〇パーセント以上がモルモン教徒であり、ユタ州は事実上、モルモン王国の様相を呈している。モルモン教会が州の司法、行政、立法を独占しているからである。モルモン教会が「国家のなかの国家」といわれるゆえんである。そしてその頂点にたつ人物は州知事ではなく、モルモン教の大管長であり、幹部なのである。モルモン教会の資金の運用については後述する。いずれにしろ大管長とその幹部が、モルモン王国のあらゆる面での絶対的指導権を握っているのである。そして大部分の信徒は、モルモン教がどんな宗教かを理解せず、ただ教会の教えに忠実に従うか、あるいはアメリカのキリスト教界と同様、世俗化しつつある。


前に戻る   次へ進む

「素顔のモルモン教」へ戻る

wpe2.jpg (1620 バイト)