高橋 弘 著 「素顔のモルモン教」


T 素顔のモルモン教 − 1 正典のない宗教


 モルモン教には「モルモン教の基準とすべき書物」(standard works)と呼ばれるものがある。『聖書』『モルモン経』『教義と聖約』『高價なる真珠』である。キリスト教は『聖書』のみを正典とし、その信仰と生活の基礎を『聖書』に依拠し、その教義と神学は『聖書』に規定されている。『聖書』の中で、神にかんするすぺての真理が明らかにされていると信じるからである。その他の書物はすべて補助的な性格のもので、正典に代わるものではない。しかし、モルモン教は次のように主張する。『聖書』は旧い啓示である。ジョセフ・スミスという新しい神の預言者が選ばれ、この時代にたいする新しい啓示が示された。だから『モルモン経』を受けいれない教会は、したがってすぺてのキリスト教会は誤りである。『モルモン経』こそ新しい時代の福音である。こういうわけで『聖書』は旧い福音として否定される。モルモン教にあっては、新しい時代の福音である『モルモン経』こそ『聖書』以上に大切な書物なのである。このように正典という観点から考えるとモルモン教はキリスト教ではない。

 しかし筆者からみれば、『モルモン経』も厳密な意味では正典ではない。なぜ正典ではないのかその大きな理由が二つある。


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