「アブラハム書」の真実


「アブラハム書」とは、ユダヤ人の始祖であるアブラハムが記録した古文書の翻訳であり、末日聖徒イエス・キリスト教会が使用している聖典の一つである。

ジョセフ・スミスはエジプト語で書かれたこの文書を神の力によって翻訳したことになっており、その内容は驚くべきものである。

長い間、この古文書の所在は不明であったが、1967年になって再発見された。モルモン書の金版は、ジョセフ・スミスによると既に天使が持ち去ったということになっており、われわれの眼に触れることはなくなってしまっているが、アブラハムが書いたというこの古文書が再発見されたということは、ジョセフ・スミスが本当に神の預言者であり、エジプト語を翻訳する能力(あるいは神から与えられた能力)を持っていたかどうかを確かめることの可能性をもたらした。

しかし複数のエジプト学者の翻訳の結果、その古文書はイエス・キリストの時代のもので、アブラハムの時代からは2000年も後のものであることと、ジョセフ・スミスの「翻訳」は、実際の内容とは全く異なるものであることがわかった。その古文書は「死者の書」と呼ばれるもので、死体(ミイラ)と共に埋葬されるありふれた書物だったのである。

また、この古文書にはいくつかの図版が記載されているが、一部は欠損していたこともわかった。アブラハムの書には欠損部分が復元されて記載されているが、その復元の仕方も誤っていることがわかった。

以上から、アブラハムの書に対する信頼性は全く失われ、当然、ジョセフ・スミスの預言者としての地位も危機に陥ったかと思われた。

教会側は、エジプト学者の見解を受け入れ、発見された古文書は「死者の書」であることを認めた。しかし、驚くべきことに、発見された古文書は、ジョセフ・スミスがアブラハムの書とは全く無関係のものであるという見解をとっている。また、一部の教会幹部は、ジョセフ・スミスが、その古文書を一つの道具として、その内容とは別に、神から啓示を受けてアブラハムの書を書いたのだという見解を示している。古文書の翻訳である、と聖典に明記されているにも関わらずである...。

参考文献:"No Man Knows My History - The Life of Joseph Smith" 2nd Edition by Fawn M. Brodie

関連ページ:「素顔のモルモン教−『アブラハムの書』と黒人差別」

アナホリ参考過去ログ:カバラとジョセフ・スミス


アブラハム書翻訳の経緯

アブラハム書のパピルスには何が書かれていたのか


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