ルーシー・スミスの著書


1845年の教会の大会で、ジョセフ・スミスの母であるルーシー・スミスは、自伝を書き上げたので出版したいと発表した("Times and Seasons", Vol.6)。その本は結局、使徒オルソン・プラット長老により、「Biographical Sketches of Joseph Smith the Prophet, and His Progenitors for Many Generation」というタイトルで1853年に出版された。出版された当時、教会所有の新聞「デゼレトニュース」はこの本を推薦し、1854年11月16日付けで「末日の業について少しでも関心のあるすべての聖徒は、この本を持つべきである」とコメントしている。ところが1856年以前に、ブリガム・ヤングは教会員に対し、この本を禁書とすべきだとしている。1865年10月21日付けの新聞「Latter-Day Saints' Millennial Star」では、教会の大管長会はこの本を厳しく非難している。

最近、説教旅行に出た際、テーブルの上に置かれたある本を手にとってみた。驚いたことに、その本はルーシー・スミスの著書であった。なぜ驚いたかと言えば、われわれは既に、その本は不正確であり、発行された全冊を一冊残らず回収・処分するように発表してあったからである。英国では回収・処分のための熱心な努力が払われたが、一冊残らず処分されるまでその努力を継続して欲しいと願っているし、この地でも同様にして欲しいと願っている。その本の誤った記述を一つ一つ指摘することもできるが、そのようなことをわれわれはしたくない。多くの偽りや誤りに満ちており、歴史記録として全く信頼することができないと言えば十分である。したがって、われわれは、教会員の男女すべてに対し、もしその本を持っていたら、その本が再び読まれることのないように処分するべきと考えている。もしその本の評判に心をとめ、家に保管し続け、正しい歴史的事実として子供たちが読むようなことがあれば、その持ち主は懲戒に価する。その本を処分しない者は子孫に嘘を伝える者であり、この勧告を耳にした後もこの本を処分せずに子供たちに嘘を教える者には神の呪いが下ることを、われわれは知っている。

教会指導者は、あたかもオルソン・プラット長老がその本の出版したことがとんでもない誤りであるかのような言いぶりである。しかしルーシー・スミスの死後、10年か11年経った後、教会指導者は彼女の著書の改訂版の発行を決定している。改訂版の前書でジョセフ・F・スミス長老はこう書いている。

この本は1865年8月23日ヤング大管長により、発禁処分となったものである。しかし部分的に誇張がみられるが、多くの有用な情報が含まれていることも権威者たちによって認められており、彼らの多くは発禁処分が下ったことを残念に思っている。したがって、ヤング大管長は改訂委員会を設立し、そのメンバーにスミス家の事情にも教会歴史にも精通しているジョージ・A・スミス長老、エライアス・スミス長老というジョセフ・スミス大管長の2人のいとこを任命した。この2人は原作を丹念に改訂・修正し、その成果をヤング大管長に報告し、承認を得た。("History of Joseph Smith by His Mother", Introduction)

本来、原著者が既に死亡している場合に改訂版を発行する際は、脚注などにより改訂・修正を行うべきだろう。しかしこの改訂・修正作業にあたっては、直接原文に手が加えられた。原著と改訂版とでは、736語が削除されており、そのことは改訂版に明示されている。しかしそれら以外に436語が追加され、1379語が削除され、220語が変更されている。これらの改変に注釈は記されていない。

ルーシー・スミスの原著には、教会が教えるジョセフ・スミスの姿とは異なる記述が多く見られる。中には教会の基本的な教義を揺るがすようなものも含まれている。教会は原著を改訂することにより、そのような都合の悪い部分を削除し、教会にとって有利な記述が残るようにしたのである。どのような「都合の悪い部分」がどのようなものであるかは、追って明らかにしていきたい。

 

参考文献:"Mormonism - Shadow or Reality?" by Jerald and Sandra Tanner


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