明治34年二六新報モルモン教関連記事


 8/19 ヒーバー・J・グラント投稿(前半)

  8/20 ヒーバー・J・グラント投書(後半

8/17 モルモン宣教師を訪ふ

  8/18 モルモン宣教師を訪ふ

8/19 モルモン宣教師を訪ふ

   8/21 モルモン宣教師を訪ふ

  8/23 モルモン宣教師を訪ふ

   8/22 論評 モルモン

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 8月19日号

 People's Column (Apostle Heber J. grant's Letter)
To the Great and Progreessive Nation of Japan

 In company with my assochiates sent to you from the headquarters of the Church of Jessus Christ of Latter-Saints, in SAlt Lake City, Utah, as an Apostie and minister of the Most High God I salute you and invite you to consider the important message which we bear.
We do not come to you for the purpose of trying to deprive you of any truth in which you believe or any light that you have been privileged to enjoy. We bring to you greater light, more truth and advanced knowledge, which we offer you freely
We recognize you as the children of our commhn Father,the intclligent ego, is the o**pring of God; therefore men and women of all races and kindreds and tribes and tongues on the face of the earth are brothers and sisiters. It is, then, in the spirit of frataraity that we approach you desiring your walfare now and hereafier. Our mission is one of duty. We have been commanded of God to prcelaim His word and will to the world. It is by His divine authority that we act, and not in our own name or for personal ends. We entreat you to listen to our word.
 There have been in all ages some men inspired by the Almighty for the benefit of their own race and nation. The light they hrought may be likend to that of the stars in the firmament.It was adapted to the times and conditions when they appeared. They all looled forward to a period when greater light and higher truth shoud be made manifest. We declare to you that this greatar revelation has come, and we have been commisstioned from on high to expound it to you.
The power and might and progress of the nation that are called Christion, proclaim the fact that there is something in their faith which is grand and potent for good. But the division and contention existing among the various sects into which they are separated, give proof that there is something among them that is wrong and which tends to strife instead of union; to war instead od peace. The truth is, that Jesus of Nazareth introduced to the world the divine religion intended to unite all mankind as one family and redeam the earth from evil. Error has crept in among his profesred deciples, and darkness has come over the face of the world, and the pure light of heaven has been obscured.
                                                To be continued

 英文投書欄
(使徒ヘツバー・ジェー・グラント氏の宣言書)
進歩的思想に停める強大なる日本国民諸君

ユータ州ソウルトレーキ市に於けるラタアデーセーンツ基督教会本部より派遣されたる余の同僚と共に余は今貴国に在り。余は*に至高至大の神の使途及び牧師として謹んで諸君の敬体を表す。願くは余をして吾徒の齎(もたら)し来たれる必要なる使命の何たるかを陳べ以って諸君の賢慮に訴ふる所あらしめよ。吾徒は諸君の信ずる真理及び諸君の悦ぶ明光を掠め去らんとする目的を抱きて貴国に渡来せるにあらざるなり。吾徒は更に大いなる光、更に多き真理、且つ更に進歩せる学問を自由に諸君に捧呈せんが為めに来たれるなり。吾徒は諸君は即ち資人共有の父たる創物主の子孫たることを信ず。彼の智的自愛自尊の人の精神なるものは神より賜りたるものなり。此賜を享けて生息する地球上の各人種各男女は即ち吾徒の兄弟なり姉妹なり。吾徒の来て諸君に対し諸君が現在及将来の幸福を希求所以のものは所謂同胞友義の精神に基けばなり。吾徒の世界に福音を伝え、神の意旨を播伝せんとする所以のものは一に神の命なればなり。吾徒の天職は即ち吾徒の義務也。吾徒あに天職を尽さざるを得んや。吾徒の為し且つ行わんとする所のものは吾徒自身の利益の為にあらずして神の聖権に依りてなり。諸君請ふ耳を傾けて吾徒の言はんと欲する所を聴け。
古往今来成る人種及国民の福利を増進を増進せんが為め神は彼等間に聖人君子を生ぜざるはなし。此等聖人君子のもたらし来れる光は天に懸かれる**たる星に似たり。而して神は其時世及事情に応じて此等の人を生ず。此等の人は更に大いなる明光、更に高き道理の此世に顕はれ来ることを先見せり。諸君、吾徒は*に諸君に告げんとす。所謂最大天啓は来れり。而して此天啓を拡張せよと神は吾徒に使命せり。仰も基督教国として自ら任ずる所の国民の情勢、威力、及び進歩は彼等の信仰の中に其善美なるものあるを宣言す。然れ共各宗間に於ける分懐及争闘は邪悪其物の*間も幡まるが釈明するに足る。連合の代わりに争闘を生じ、平和の代わりに動乱を生ずるは悉く邪教の為す所なり。それ基督の此世の生まれしは神聖なる宗教を世界に拡張して依て以て総ての人類を一家族に結合せしめ全世界を**より救はんが為たる事明かなり。不幸にして「誤謬」なるもの基督の徒弟を眩惑し、遂に暗黒は世界を包みて天の清き光を遮断し去れるなり。(未完)

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8月20日号

 People's column. (Apostle Heber J. Grant's Lette)
                                         −−−−Continued.

  The great Eternal God in His infinite mercy has restored that faith introduced by His Son Jesus Christ who has reappeared and once more organized His church on the earth and conferred authority upon His chosen serrants to proclajm the Christian faith in all its early simplicity, attended by the same authority and power. This is preparatory to the consummation of all things, spoken of by the seers and sages and posts and prophets of all the centuries from the beginning of time. The great Eternal God has spoken out of the beavens opened up communication between Him and His people. He commands His children in every country, of every class and creed, and position of their sins and approach to Him in spirit, also to be baptized by immersion in water by one holding aythority from Him for the remission of their sins, with the promise that by the laying on of the hands of HIs deputed messengers, the Holy Ghost shall be bestowed upon all persons who thus obey His word. This will constitute a new birth and open the door of the kingdom of heaven to every. obedient soul. By His suthority we turn the divine key which ppens the kingdom of heaven to the inhabitants of Japan. We say to them all, come to the light which has been shed forth from the Sun of righteousness! We offer you blessings that are beyond price. They are not of man, nor do they come by the power of man, but they are from heaven where the true and living God dwells and rules in majesty and glory. That which your ancestors received which was good and which lead to do good, was but as the glimmering of the twilight. We bring to you the truth in all its effulgence, direct from the grcat. Then shall your souls be filled with peace and love and joy, and you shall learn how to unite with the great and pure of all nations and tribes, for the establishment of the grand afier you shall dwell with the just and the redeemed in the immediate presence of our Eternal Father, and your glory and dominion shall be celestial and everlasting.
Your servant for Christ's sake, Heber. J. grant
 

 英文投稿欄
モルモン宣教師グラント氏の宣言書(承前)

至大至高無辺無窮の神は限りなき愛を以って、一旦神の子基督を人間界に生じ、彼をして伝えしめし信仰の将さに潰えなんとするに際し、再び之を回復せり。此に於て神の主宰し賜ふ教会は再び地上に現はれたり。而して神は往古に於ける総ての**、総ての権能、総ての威力を以って基督教の信仰を世界に伝播すべしとて撰抜せる信徒に使命せり。これ創世以来幾多の先見者、預言者、聖人、詩人等の言に発して万事の大成を期する其準備たらんが為なり。在天の神は地上の神民に対して一の無形的通路を開き常に其の意想を通ぜり。且つ神は国、階級、宗派、地位の如何を問わず、邪道悪路脱し、非を悔い罪を改むる人をして、精神を以って神に近づかしめ、また神を代理する使者の手を信者の頭上に置くは即ち神の目に服従する人には常に御霊の宿り賜ふとの約を重んじ、罪の免除されたる証として其人を水に沈め、以って洗礼を行ふべしと命ぜるなり。此事たる其人に一新せる生命を与へ、且つ天国の戸は各服従者の為に斉しく開かるるが為めなり。乃ち吾徒は神の権能に依り、天国の戸を開く神聖なる鍵を転じて之を日本住民に曝し、其心を開き其魂を導かんとするなり。日本住民諸君、来たれ諸君。何ぞ諸君は来て正義の太陽より発射する光の中に住せざる。吾徒は*値を以って購ふ能はざる所の幸福を無代償にて諸君に捧呈せんとするなり。所謂幸福なるものは人より来るに非ず。又人の力より来るに非ず。其来るは即ち真正光栄の理に在て宇宙万物を支配し賜ふ生ける神の御座なる天より来るなり。諸君が祖先の善道なりと信じ、又善道に導く所のものなりと信ぜしものは、惜しむらくは単に東天の白む曙光に似たるを、吾徒の持ち来たれる真理は**たる日光より直接に来る所の**たる真理なり。所謂日光とは基督教の真理なり。請ふ諸君、来て神聖なる無窮の神前に導く所の道を歩み行け。然らば則ち諸君の霊は平和と愛と喜悦とを以って充たさるべし。然り、諸君は地上に於いて高大なる正義の帝国即ち精神的帝国を建設せんが為に各国民各人種中偉人高士の同信者及同志者と手を握て連合を講じ、膝を接して平和を歓ぶを得べし。然り、諸君は終生吾人の尊敬する無窮の父の直轄の下に住み、贖はれたる人、救われたる人、正直なる人と交はり得べし。而して諸君の光栄諸君の領分は蒼穹と共に極まりなかるべし。
           基督の命を奉ぜる諸君の従僕  ヘツバア・ジエー・グラント

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 8月17日号

 モルモン宣教師を訪ふ(上) (外客訪問員)
 

 1944年6月27日米国イリノイス州カーセージ駅にて虐殺せられたる預言者ジョセフ・スミスの創成せるモルモン宗。虐殺に先だつ十余年前即ち1834年4月6日僅々6名の同志相謀(あいはかり)てラタデーセーツ基督教会を組織し70年を距る今日(こんにち)現に40万の会員を有せるモルモン宗。多妻教なり邪教なり不道徳教なりとの非難を受けしにも拘らず己の信ずる所及び実行する所は真理なり名誉なりとて笑を含み獄窓(ごくそう)に呻吟(しんぎん)(6ケ月以上5年以下)し且つ三百弗(ドル)以上五百弗以下の罰金を払ひしもの数千名の多きに達せるも尚且つ益々さかんなるモルモン宗。此(こ)の宗教を我邦(わがくに)に伝播せんとて遥る々々ユータ州ソルトレーキ市より来たれる同宗監督(ビショップ)ヘッバア・ジエー・グラント氏は3名の副宣教師を従へて数日前横浜に上陸せり。記者往(ゆい)て氏をグランドホテルに訪(と)ふ。聞説(きくふ)らく氏等一行の上陸以来我警察は大いに其の動静に注意し居れりと又モルモン宗を非宗教なりとし大に之を論難せんものと尽くして其機会の到を待ちつつおる幾多の内外の宗教家もありと。記者は固(もと)より批評家として聴き得し種々の事柄を順を逐(お)ひ項を分つて読者に紹介せんと欲するのみ。

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 8月18日号

モルモン宣教師を訪(と)ふ(二)(外客訪問員)
 

 ▲宣教師グラント氏 日本に於けるモルモン宗専任宣教師はグラント氏なり。氏が率いりし二名の副宣教師は長老(エルダア)ルイス・エーケルシュ、長老ハリス・エス・エンサイン及び長老アルマオ・タイラー氏なり、氏は四十五歳なりと言はれたるも、それよりは少しく老けて見えたり。痩せぎみにして身丈長(せいたか)く覚えず人を感服せしむるに足る所の一種の風采を有し、且つ其顔容(そのがんよう)は猶太人的(ユダチック)なり。氏は黒きモーニングコートを纏(まと)へり。記者は端なくユータ市に於ける製造業に関して問い掛けたるに氏自身の纏へる衣(い)を指し「此れ毛織物(しな)は我信徒(わがしんと)の一人なる某氏所有の毛織製造所にて製出(せいしゅつ)せるもの、此毛織製造所は数百人の工手(こうしゅ)を有す。此外(このほか)最も盛大なる製造会社はピーツ・シュガア・フワクトリ(火焔栄砂糖製造所:まもじゅだいこんさとうせいぞうしょ)なり。此(この)製造会社の資本は百五十万弗、昨年は一千五百卦度(ポンド)の製糖を出せり。今年(こんねん)は二千万卦度以上の見積もりなり。余は此(この)会社の理事たり。貴国に来るに際して辞職せんと試みたりしも会社は之れを容れざるより今も尚ほ名義上の理事たるなり」とて微笑しながら語られぬ。氏は又ユータ国立銀行の頭取たりしも今は之を辞して其(その)理事たりと。其(その)身海外に来て宣教師たるにも拘わらず、現に左(さ)の要職を帯ぶ。曰くサイヲンス・クーベラチヴ火災保険会社長。曰くクーベラチヴ車輪機械製造会社長。曰くヘッバア・ジェー・グラント会社長。曰くソルトレーキ戯曲協会(ドラマチックアソシエーション)理事。曰くザイヲンス・クーベラチヴ商業会社理事。以って如何に氏の実業家たるを知ると同時にモルモン宗の実業的宗教なりと吹鼓(すいこ)さるる其(その)理由を知り得るに足るなり。
付記 グラント氏の宣言書及び肖像は明日の紙上に掲ぐべし。

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8月19日号

 モルモン宣教師を訪(と)ふ(三)(外客訪問員)
 

 ▲自費伝道 爾(なんじ)は天涯地角にまでも往(ゆい)て人々に福音を伝うべしとの救世主の命令を守りて他国へ陸続(りくぞく)伝道師を派遣する次第にて基督を信ずれが其信は愛を生ず。基督を愛すれば其愛は「服従」を生ず。基督の命令に服従して他国へ宣教師を送るは事甚だ美なりと雖(いへど)も、其送らるる宣教師自身は往々にして立派な給金を得つつ飽食暖衣の批評を招くは遺憾の至りにこそ、独りモルモン宗の宣教師には此弊(このへい)なしと云ふ。何となれば彼等は無給金にて神の霊(みたま)の指導するところに往(ゆ)き給金を当(あ)てにせずして伝道に従事すればなり。今回来邦せるグラント氏を始め他の三名の副宣教師も悉く自費なり。又他の教会にては賽銭箱を廻して寄付金を取るもモルモン教会にては左様ならずと云ふ。
▲一夫多妻 一夫多妻主義の実行は一千八百九十年九月二十七日以降モルモン宗徒に絶えて無し。此日(このひ)を以って時の宗長ウィルフヲード・ウッドラフ氏は宗徒に布告して複婚を禁ぜり。これ同宗徒の敗訴に帰せる大審院の判決に基きて国法に従はんが為なり。然れども氏等は其実行は国法に触るるも其主義丈(だ)けは今も尚神意に合(がっ)せるもの也と確信する趣を示しぬ。氏等の語る所に依れば子孫の繁殖は神の命なり。神は同宗の開祖スミス氏の前に現れ、多妻主義を可とせり。恰(あたか)も往昔(おうせき)エーブラハム、モーゼス等に神が黙示を垂れたると同様の訳(わけ)なりと。談更に進むに従って副宣教師の一人は一の大なる写真を示し「此れを見よ。何れもグラント氏の子供なり」と。記者は一見して驚けり。写真に在るは十余人の揃いも揃ふた花の如く玉の如き童男童女(どうなんどうにょ)。皆是れ氏が第一及第二の妻の生む所。あに驚かざるを得んや。氏等は交(こもご)も語って曰く色欲を満たさんが為めに多妻を娶るは大なる罪なり。然れども体格秀で才能勝(すぐ)れたる善き男女を挙ぐる其数の多き丈(だ)け夫(ふ)たり父たるものの名誉なり。若(も)しそれ第一の妻の外に第二の妻を迎へんとせんか。夫(ふ)たるもの須(すべか)らく第一の妻の承諾を得ざるベからず。夫(ふ)にして第三の妻を娶らんとせば第一第二の妻の承諾を得ざる可(べか)らず。且つ結婚式を挙ぐるに先だち其妻とならんとする婦人の両親の承諾を得ざる可らず。斯く双方承諾の上にて神聖なる結婚式を挙ぐる次第なれば双方の幸福たる勿論なり。云々(未完)

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 8月21日号

 モルモン宣教師を訪(と)ふ(四)(外客訪問員)
 

 ▲複婚の結果 記者は話頭(わとう)を進めて「我邦(わがくに)にも加藤左衛門重氏入道の話あり。重氏入道は互いに睦まじき妻と妾(しょう)とを同居せしめたり。一日(あるひ)二人の女は碁を囲み覚えず疲れて、碁盤に頬杖を突きながら眠りける。スルト妻と妾との黒髪は乱れて蛇に化し、相方絡みつきて闘ひぬ。此有様(このありさま)を見て妻と妾との心の底に蟠(わだかま)る嫉妬の程も思い遣り俄かに悟りを開き剃髪して高野山に登り、真如(しんにょ)の月を眺めたり。是は我邦の話しなれども、一夫多妻の実行にも必ず妻(さい)と妻(さい)との嫉妬は免れざるべく、従って家内に風波を生ずることも多からん。実際は如何なるものにや」と問ひ掛けたり。グラント氏等は答えて曰く「斯(か)かる嫉妬は甚だ稀れなり。前にも言へる如く承諾上より妻を娶る次第なれば左様な心配はなしと云ふも可なり。そもそも男子が第一の妻を迎ふる訳は相愛して結婚せば夫婦ともに幸福なりとの確信より生ず。第二の妻を娶るも亦(また)同様にて、若し結婚せば夫も第一の妻も娶らるる第二の婦人も供に共に幸福なりとの確信に依り、相互の承諾上よりして之を実行することなり。且つ我モルモン宗の教ふる所に依れば霊魂は常に人体に宿らんとしつついるなり。此(この)世界には比較的女子多きを以って、多妻主義の実行に頼りて神種(しんしゅ)を繁殖せしむるは神意に合すとの我宗教の信仰より生じ来る一夫多妻のもなれば妻と妻との嫉妬を醸すが如きは他(よそ)より想像するよりは少し。又実際の上に就いて語らんに我ソルトレーキ市は二十四区に分る。之を管轄する一名の宗長は二名の顧問を有し、其次に十二の使徒を有し、其又次に四十乃至六十の教員を有す。サテ、此等の教員は各(おのおの)分たれたる区の住民の状況如何を視察す、詳く言へば一ケ月一回二名の教員打揃(うちそろ)ふて信徒の家を一軒々々巡回して其家族の生活の実際を調査し之を宗長に報告す。譬へば第一の妻も第二乃至第十の妻も妻たる権利、義務、地位、待遇等の平等たるべき訳なるにも拘わらず、若し夫にして偏頗の所為あらば巡回教員は用捨なく之を宗長に報告し、宗長は時宜に依て其夫たるものを教会より省き去ることもある故信徒の夫婦間にも、妻と妻との間にも、風波を生ずること至って稀れなり。然れども神の目より看れば罪多き人間のこと故我信徒の家内に風波絶えて起らざる也とは断言し難し。是れ我等は一夫多妻(Polygamy)の故なるにあらず、恐らく彼(か)の一夫一婦(Monogamy)も断言し能はざるべし。否な、吾徒は信ず、家内の風波は比較的ポリガミーに多くモノガミーに少なしと。(未完)

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8月23日号

モルモン宣教師を訪(と)ふ(五)(外客訪問員)
 

 ▲一夫多妻は過去の事! グラント氏等は曰く「一夫多妻は過去の事なり。願くは二六の読者をして吾徒を誤解せしむる勿れ。吾徒は他より問はれざれば好んで一夫多妻主義を談ぜず。貴下も知る如く米国にても其実行は禁ぜられ、又貴国にても法律にて禁ぜらるる。吾徒愚なりと雖も国法違犯の主義を伝えんとあに遥(はるばる)貴国に来らんや。仰(そもそも)国法に従うべしとは吾徒が信仰の一なり。吾徒は聖書を信ず。聖書を基礎として打設てたる吾徒の信仰は此の(一小冊子を出して)内にも五十八個の題目あり。此五十八個の題目は種々の疑はしき論点を掩(お)ふ。吾徒は第一歩として此の諸問題より貴国人に教へ始めんとす。両三日前の事なりき、或る他宗の宣教師来りて次の日曜演説に一夫多妻主義を始め其他モルモン信仰の非なる事を攻撃すべしと我等に告げられぬ。副宣教師の一人は笑つて左の如くに語れり-----武器も何も持たず、少しも用意せぬ敵を撃つは紳士として為すこととなるや否。吾等は未だ日本語に通ぜず、土地には狎れず、且つ一の教会をも有せず。我等は暫くの間日本語を研究して然る後布教に従事せんとするも今は其便利なし。此れを知りつつ吾徒を攻撃せんとす。大人気なし。恰も武器を持って書き赤手空拳(せきしゅくけん)の人を撃つに異ならず。-----
▲神の性 神の性(ゴッドヘッド)は三個の特性を有すと吾徒は信ず。此れも他の基督教と異なる其一なり。吾徒の信ずる所に依れば父なる神は具体神(マテリアルゴッド)なり。即ち人間同様の身体、人間同様の四肢及び情欲を有す。情欲を有せずんばあに怒らんか。あに愛せんか。あに憎んや。而して子たる神即ち基督も父なる神同様の身体四肢及び情欲を有す。然れども聖霊は精神的元質もて成立(なりたち)たるるが故に勿論体を具えず。此三個の単独*が所謂「ゴッドヘッド」を彫作(かたちつく)るなり。而して此三者は常に裁断、行為、思想の上に於いて悉く一致す。委(くは)しく言へば父は父の往かんと欲する所に往き、子は子の往かんと欲する所に往き、霊は霊の往かんと欲する所に往き能ふ。而して此三者は各々異なりたる任務を帯ぶ、然れど何事たりとも三者常に衆議して遂に合意す。人間が此世を去つて次の世に逝く場合には肉と骨(こつ)と且つ血の代りに精神的流動物を以て充たされたる身体を有して限りなき楽しみを得つつ限りなき生命を送り能ふなり。云々(完)

正誤 前掲「家内の風波は比較的ポリガミーに多く(少しの誤植)モノガミーに少し(多しの誤植)」なれば正誤す。

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8月22日号

 論評 モルモン
 

 人生の歴史顧みてばくたるが如きは、最も短き各人の生命に比較すればなり。無限の時代より見れば何でも無し。文明の進歩著しきが如しと雖も、宏大なる学問の眼より見れば亦是れ最初の一階段に過ぎず。学んで而して益々学問の足らざるを感じ、勉めて而して愈々智力の浅果敢(あさはか)なるを悟る。固より其所なり。低度なる現在の文明に誇り浅薄(せんはく)なる現在の学問に満足するものは、憐れむ可き無学の徒のみ。夫れ此(か)くの如し。有形無形の理学宗教の事、飽くまでも進んで研究して可なり。在来の美を美とし多数の善を善とし安んぜんか。已に今日の進歩あるべき様なく、今後の進歩亦空し矣(い)。
衆愚と云い或は盲千人と云ふ。是等の言して真理を含むものならば、多数の善とする所こそ悪にして、多数の悪とする所善なるも知る可からざる。徒に懐疑の説を唱ふるに非ず。不完全なる社会に多数政治を非とするの無理を云ふ者にも非ざれ共、学者の観念に於て多数は固より信頼す可らず。如何なる場合にも衆は愚多数は悪なりと云ふに非ず。基督教、佛教、回々(マホメット)教、モルモン教、順次に小数なるもの善美なりと云ふにも非ず。吾徒は只、晏然現在の総てに満足する能はざる者なり。傲然多数の声に雷同する能はざる者なり。
モルモンは来れり。日本開闢以来始めて来たれり。好くこそ来たれり。先ず之を知って見る可し。開宗以来六十有余年の非常の反対と迫害を凌ぎ来りて、今や信徒三十万人教師一千二百人、殆どユタ州の全権を握て合衆国中最も殷富の地方と称せらるるに至る。是れ事実なり。其の間必ず感ずべき所のものある可し。大多数なる一夫一婦の基督教民に囲まれつつ飽くまで一夫多妻主義を実行して屈せず(厳禁せられて尚ほ曲直を法廷に争う迄も)自(おのずか)ら愛すべき信念なくんばあらず。而かも公然多くの妻を蓄へて一家和楽子孫繁栄を謡ふと云ふ。彼等は実際に如何なる方法を以って之れを行いつつあるや。夫婦親子(ふうふしんし)の礼は果たして如何なるものなるや。此奇取(このきとっ)て以て一夫一婦の原理を確かむるに足る可く、亦以て我学問に資す可き者ならずや。宣教師遥に洋を渡り、長く西洋基督教国の文明に薫染(くんせん)せる日本に侵入し来る。勇なりと云ふ可し。聞く所に依れば彼等は悉く自費を以って伝道するものなりと、意気亦愛すべし。吾徒は苦き顔を以て之を虐遇(ぎゃくぐう)するに堪えず。好意の笑(えみ)を以て之を迎え先づ兎も角も其説を聞かんと欲する者なり。
真理に二無し。大観すれば各種の宗教大同小異なるのみ。古往今来(こおうこんらい)人を教ふる其宗教者が反目軋轢する醜状は最も見るに堪えざる所、慈仁博愛を唱道(しょうどう)する宗教の本意に反するは勿論、国民の襟度(きんど)として固より称す可きものに非ず。宇宙茫々法海無量(うちゅうぼうぼうほうかいむりょう)、之を窮むれば益々深し。あに一のモルモンを云はんや。

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