キンダーフック版について

キンダーフック版と言ってもほとんどの日本人モルモンはしらないでしょう。モルモン教の真偽についてキンダーフック版はたいへん重要な事実を提供します。
その版は1843年イリノイ州のキンダーフックというところで「発見」されました。見つけたのは同地の9人住人でした。真鍮製の6枚の板で、解読不能の不思議な古代文字のようなものが刻まれていました。発見した人たちはこの版(キンダーフック版)をモルモンの予言者ジョセフ・スミスの元に持ち込みます。金版の翻訳者であるジョセフ・スミスに翻訳させようというのです。
受け取ったジョセフ・スミスはこの版を真正な古代の遺物と認め、早速翻訳を開始しました。ジョセフの秘書であるウイリアム・クレイトンは日記に以下のように記しています。

 "I insert fac-similes of the six brass plates found near Kinderhook,..."
 "I have translated a portion of them and find they contain the history of the person with whom they were found. He was a descendant of Ham, through the loins of Pharaoh, king of Egypt, and that he received his kingdom from the Ruler of heaven and earth."(教会歴史 vol.5, p.372)

「私はキンダーフックの近くで発見された6枚の真鍮の版複写を書き入れます・・・」
「私はそれら(キンダーフック版)の一部分を翻訳しています。それらはその版によって新たに発見された人々の歴史が含まれています。彼らはハムの子孫、エジプト王であるフォラオの腰から出た者であり、天地の主権者である神から王国を受けたのです」

 彼の書いた「版の模写図」を現在も私たちは見ることができます。(赤枠で囲まれた部分については後述します)

キンダーフック版全部

ところが、このキンダーフック版は偽物だったのです。
版を発見した9人のうちのひとりであるW・P・ハリス(W. P. Harris)が1856年4月25日にその発見について証言しました。そこには「版はブリッジ・ホイッテン(Bridge Whitten)が切り出し、ホイッテンとR・ワイリー(R.Wiley)のふたりが文字を刻み、ウイルボーン・フュージット(Wilbourn Fugit)がふたりを指揮していたようだった」とあったのです。
1879年6月30日にはやはり9人組のひとりであったW・フォガット(W. Fugate)もこの版が悪ふざけであることを手紙で認めています。

"I received your letter in regard to those plates, and will say in answer that they are a humbug, gotten up by Robert Wiley, Bridge Whitten and myself.... We read in Pratt's prophecy that 'Truth is yet to spring out of the earth.' We concluded to prove the prophecy by way of a joke." (Letter of W. Fugate, as cited in The Kinderhook Plates by Welby W. Ricks, reprinted from the Improvement Era, Sept. 1962) 

「私は版についてのあなたの手紙を受け取りました。私は回答としてR・ワイリー、ブリッジ・ホイッテン、そして私自身が詐欺を行ったと申し上げます。・・・私たちは、プラットの予言『真理はいまだ大地から湧きでてはいない』を読みました。私たちは座興で予言を実証してみせたわけです。」 

その後、キンダーフック版は南北戦争で失われてしまったとされていました。ジョセフ・スミスも翌年暗殺されてしまいます。
発見者の告白に対して、モルモン教団は金版の真偽問題の際にアンソン教授に対して取った手法と同じ方法で対応します。つまり、9人の発見は真実で版も真正なものだったが、発見者たちはモルモンの反対者の手に落ちて「あれは嘘だった」と偽証させられていたというのです。

 時代が下って1962年、ブリガム・ヤング大学のM・ウイルフォード・ポールソン教授がシカゴ歴史博物館で版のオリジナルのひとつを発見しました。その版は複写されていた資料の5番目(上の白黒の図の中で赤枠で囲んだもの)にあたるものでした。

キンダーフック版実物

 この発見はモルモン擁護の学者たちを大いに喜ばせました。BYU教授だったW・リックス(W.Ricks)もそうでした。オリジナルを調べれば、版が真正であることと、発見者がモルモン反対者によって転向させられたことが証明できると確信したからでした。
版の発見はジョセフ・スミスが予言者であることを断定し、発見者の話が虚偽であることをはっきりさせるだろう
これを機会に大地から掘り出されたモルモン書も詳しく調べられるだろう
ほとんど勝利宣言のような見解を発表しました。
ところが、これはぬか喜びに終わってしまいます。1965年リックス教授から許可を得たBYUのジョージ・M・ローレンス物理学教授はこの版に非破壊検査行いました。その結果は以下の通りでした。

 "The dimensions, tolerances, composition and workmanship are consistent with the facilities of an 1843 blacksmith shop and with the fraud stories of the original participants."

 「寸法、耐性、配合、および製造者技術は1843年の鍛冶屋の熟練ぶりによるもので最初の関係者の語った詐欺のストーリーと一致している。

 つまり、発見者がジョセフをだましていたということが裏付けられたのです。
ローレンスの結論は非破壊検査によるものだけでしたので、数人のモルモン擁護学者はそれでもなお強硬に真正を主張しました。

1980年にモルモンの学者スタンリー・P・キンボール(Stanley P. Kimball)はシカゴ歴史博物館から破壊検査の許可を得、実験を実施しました。そして、その結果は機関誌エンサイン(聖徒の道)1981年の8月号の66〜70頁に発表されました。

 "As a result of these tests, we concluded that the plate... is not of ancient origin.... we concluded that the plate was made from a true brass alloy (copper and zinc) typical of the mid-nineteenth century; whereas the 'brass' of ancient times was actually bronze, an alloy of copper and tin."

 「これらのテストの結果、我々は版が古代の起源のものでないとの結論を下した。・・・ 我々は、版が19世紀中間の典型的な真鍮合金(銅と亜鉛)から作られたと結論を下した古代の『真鍮』とは実際は青銅と銅とスズとの合金である。」

 かくして、キンダーフック版は19世紀の人間が作った偽の遺物である事が確定しました。予言者ジョセフ・スミスは9人のペテンに引っかかったわけですが、ジョセフは大真面目にこれを古代の記録と信じ翻訳をしていたのです。キンダーフック版オリジナルの発見はジョセフがニセ予言者であり、彼の既に翻訳して来た書物は全てでたらめということの証明になってしまいました。 

私は冒頭に「日本人モルモンはキンダーフック版について全く知らないし、教えられていない」と述べました。モルモン教はごまかしきれなくなったことはまるで最初からなかったかのように取り扱います。キンダーフック版はモルモン教の真実性に対して致命的なダメージを与えるものなので、信者には知らせたくないし、知ってもらっては困るものなのです。モルモン教は信者をだまし続けないと存続できなくなっているのです。

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