ありえないユダヤ人という表現
「ユダヤ人」という呼称は現代の私たちにとっては極めて日常的に使っている言葉です。
この言葉の起源に付いて考えて見ましょう。元々旧約の民を指す言葉には「ヘブライ人」
「イスラエル人」と言うものもあります。 「ヘブライ人」というのは(ユーフラテス)河の向こうから来た人々という意味です。 また、「イスラエル人」とは神(エール)が治めるという意味の信仰告白に基づいた呼称です。 これらふたつはかなり古い時代から用いられていました。 さて、今ではこれらふたつより一般的になった「ユダヤ人」という言い方ですが、 これの使い始めは、ずっと時代が下ってからの事です。 ソロモン王の後、北イスラエル王国と南ユダ王国に分裂したダビデの王国は北イスラエルがアッシリアによって滅ぼされ、 南ユダ王国はバビロニア滅ぼされます。 そして捕囚されて行った南ユダ王国の上層階級をバビロニアの人々が「ユダヤ人」 と呼び始めたのがユダヤ人という呼称の最初です。 バビロニアによるエルサレム陥落がBC587ですから、それ以降、捕囚時代からの呼称なのです。 また、古い資料としてはアリストテレスの弟子エオフラストの記述で「ユダイオイ」(ユダヤ人)とあります。 このテオフラスの生涯はBC372或いは371年〜288或いは287年ですから、 一般的に「ユダヤ人」が 使われ出したのはこの前300年のころからでしょう。 旧約聖書でも「ユダヤ」と言う言葉の最初はエズラ記の5章8節で、 これはペルシャ帝国の一地方として現れており、やはりバビロニア以後のものです。 さて、モルモン書を見てみましょう。 モルモン書では「ユダヤ人」と言う表現がごく普通に出てきます。第1ニーファイだけでも10以上を数えます。 一例ですが、いきなり1章2節に
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参照「ユダヤ人とローマ帝国:大澤武男(講談社現代新書)」 |