モルモン教徒の下着(ガーメント)

 「モルモンって変な下着を着ていませんか?」
 そんな質問をよく受けます。確かにモルモン教徒は男女ともステテコのようなあまり格好のよくない下着を着ています。この下着はガーメント(garment)と言うもので、モルモンにとっては大変神聖でかつ重要なものなのです。
 ここではそのガーメントについて説明します。

ガーメントとは 

 garmentを辞書で引いても特別な意味は見出せませんが、「モルモン用語」では大変重要でかつ神聖な意味を持っています。モルモン教義ではガーメントの由来を旧約聖書の創世記とします。アダムとイブがエデンの園を追放された時に神から与えられた革の衣がガーメントであるというのです。
 『 主なる神は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。』(創世記3:21)
 もちろん、モルモンのガーメントは皮製ではありません。所謂、メリヤス製で、日本国内では製造されておらず、ユタで生産されたものを輸入しています。それを東京神殿内のショップで直接あるいは通販で購入するのです。

 ガーメントは全てのモルモン教徒が着れるわけではありません。神殿でエンダウメントと言う儀式を受けた者だけが着ることができます。もっと正確に言うと、エンダウメントの前に洗いの儀式濯油の儀式があります。そのふたつの儀式を受けて清い心身になった後に身に着けることになるのです。この洗いと濯油の儀式は最近改変されましたが、それまでは儀式を受ける人が裸の胸や腰などに聖水やオリーブ油を塗りつけられるという恥ずかしいものでした。
 もちろん、ガーメントは下着ですから、それを着せて貰う際は裸です。そして、その時におおむね以下のような祝福の言葉(呪文)を受けます。

汝にガーメントを着せる。汝はこれを生涯着用すべし。これはアダムがエデンの園に裸でいたときに与えられたガーメントをあらわし、聖なる神権のガーメントと呼ばれる。これを汚すことなく、誓約に忠実であるならば、汝がこの世の働きを終えるまで、破壊者の力より盾となり守りとなる。

 また、この時通称神殿名と言う新しい名前も貰います。この名前は男性は生涯誰にも明かしてはならず、女性は夫以外のだれにも明かしてはならないと命じられます。この神殿名については別項を設けて説明する予定です。 


ガーメントの変遷と形状 

 モルモン教義が変質してきたようにガーメントも変遷があります。英文サイトLds-Mormonには過去から現在のガーメントの画像(男性用)がアップされています。画像を借用、転載します。
 

ガーメントの変遷

 左端のc1842はノーブー時代のものでハイラム・スミス、ジョセフ・スミスの兄弟が所有したいたものと同種のもので、おそらくもっとも古いモデルでしょう。1842年にモデルチェンジがあり、1975年まで使用されたのが左から2番目です。そして、右の2つが現行のモデルです。つなぎになったタイプは不人気で、右端のセパレートタイプがポピュラーなようです。(ここで紹介されているのは男性用です)
 脱会モルモンの方の協力で生ガーメントを撮影することが出来ました。写真のガーメントは右端のセパレートタイプのものです。

ガーメント写真 ガーメントにはもうひとつ大事な特徴があります。それはしるしの存在です。上の図で確認しながら見てていただけると良いのですが、左右の胸、へそとひざにしるしがついています。以下にその部分をアップで撮った画像を上げます。

着ている人から見て右胸に「L」のさかさま。
(定規を示す)

右胸しるし

左胸に「V」
(コンパスを示す)

左胸しるし

へそに「-」
(写真は出荷時点から粗悪で色が付いています。アメリカ製とはこんなもの)

へそしるし

右ひざに「−」

ひざしるし

 これがしるしと言うもので、ガーメントを神聖にしている所以でもあります。しかし、写真でおわかりのように単なる刺繍と言うか、ほつれのようなものに過ぎません。ミシンでガーっと作業すればいとも簡単に出来上がるでしょう。いわしの頭ではありませんが、信仰心がなければなんのありがたみもありません。

ガーメントにまつわるルール

 ガーメントは祈りの言葉の「着用すべし」と言う命令口調の通りで、ひとたび身に着けると、入浴、着替え、水泳などの着ていては出来ないやむをえない運動、などの場合を除いて脱ぐことを許されません。24時間着用しないといけません。これを着ることを止めるということは、神からの守りを棄てるということで、背教を意味します。資格のない人に上げたり貸したりすることはもちろん、安易に人に見せることも禁じられています。もっとも、下着ですから、だれかれにでも見せるというものでもありません。ただ、モルモンの下着について質問して来る人の中にはモルモン教徒の不倫相手や婚前交渉相手もいるのです。そういう関係ならイヤでも下着を見ることになりますよね。そんな神聖なものを身に着けていながら罪である不倫や婚前交渉をするというのもモルモン教徒の理解しがたい姿なのです。
 ガーメントを脱いで、タンクトップやキャミソールなどを着ることはもちろん禁止です。ガーメントは見せることも禁止ですから、胸の開いた服も着れません。
 着るのは一番下です。「ガーメントは皮膚だと思いなさい」と言うのがモルモンの教えです。ガーメントの下に身に着けていいのは生理用ショーツのみです。たいへんおかしな光景ですが、モルモンの女性はブラジャーなどもガーメントの上から着ています。
 加工することも禁止です。襟周りを広げたり、たけや袖口を縮めたりすることも出来ません。破れた場合などの繕い程度は許されます。
 着古して捨てるときも簡単に捨てててはいけません。しるしを切り取って、その部分を焼却するか、形が分からなくなるまで切り刻んでから捨てなければなりません。 

ガーメントとマインド・コントロール

  モルモン教にとっては大変神聖な神が与えた着衣であるガーメントは一般人から見れば単なる質の悪いメリヤスのステテコに過ぎません。しかし、カルト宗教、モルモン教を研究する立場から見るとガーメントにはまた別の意味があることがわかります。それはガーメントはマインド・コントロールを維持強化するシンプルでかつ確かな装置なのです。
 ガーメントは、これを着るということ自体が、信仰の奥義であり、信者の特権となっています。ガーメントを着続ければ祝福があり、着ているだけで優越感を感じる仕組みになっているのです。そして、逆に脱げば罰を受けるという、恐怖による拘束がその優越感を支えています。
 下着と言うほとんど毎日着用するものを使って、心に拘束をかけると言うテクニックは本当に恐るべきものだといわざるを得ません。
 モルモンを離脱しようとしても、ガーメントを脱ぐことにはかなりの抵抗を感じます。既に実質脱会し、知恵の言葉を破っているような人でもガーメントは着ていたりします。これを脱ぎ捨てることにはそれなりの覚悟が必要です。実際問題として長年モルモンでいた場合、ガーメントを脱いだ後どんな下着を着れば良いのか、分からないと言うこともあります。
 積極的に考えるならガーメントを脱ぎ捨てることが出来たなら、またひとつモルモンの呪縛から自身を解放することが出来るたと言うことになるのです。

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